薬事法化粧品の宣伝に「美白」の表現は使えない!?薬事法で定める広告規制について 

薬事法では、化粧品や医薬部外品の宣伝において、消費者に誤解を与えるような誇大表現や虚偽の宣伝を禁止しています。例えば医薬部外品や健康食品を販売する時に、「これを飲めば、癌細胞が消える」とか、「短期間で食事制限をせずに大幅に減量できる」といった広告を出すと、違反になる訳です。

では化粧品はどうでしょうか?ここでは化粧品の効果のうち、特に消費者の間でニーズの高い「美白効果」について考えてみました。

薬事法は2014年の法改正により、名称が「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(略称、薬機法)と変更されました。しかし、本稿では従来通り「薬事法」で呼ぶことにします。まず法律における化粧品を確認しておきましょう。

「人の身体を清潔にしたり美化して魅力を増し、容貌を変え、または皮膚もしくは髪を健康的に保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似した方法で使用されることが目的とされている物で、人の体に対する作用が緩和なもの」が化粧品とされます。

通達により、化粧品などの広告に使用できる効果や効能は、薬事法の解釈に基づき、56項目に限定されているのです。残念ながら「美白」は、その56項目に含まれません。尚、「美白」に似た言葉に「ホワイトニング」がありますが、こちらも使用できない表現です。

ちなみに薬事法上、化粧品に認められる広告表現としては、「肌のキメを整える」「肌をひきしめる」「皮膚をすこやかに保つ」などがあります。56項目に該当するのなら、自由に表現して良いという訳ではありません。そうした事実がないのに、効果効能を謳えば規定に抵触するでしょう。

世間では、加齢による肌のくすみやシミ、そばかすなどに悩み、美白効果を期待して、化粧品を買い求める消費者も非常に多いと思います。ただそうした消費者でさえも、化粧品を塗れば漂白されたようにシミやくすみが消えてなくなる訳ではないことは、体験的に知っているのではないでしょうか?それなのに大々的に「美白」を宣伝されては、違和感を感じますよね。

薬事法の「化粧品」には、基本的に薬理作用がありません。一方で、市販のスキンケア用品の中には「医薬部外品」として、販売されている製品もあります。こちらは化粧品と違い、何らかの作用が認められている製品です。

薬事法の医薬部外品の定義は「人体に対する作用が緩和なもので、機械器具等ではないもの」となっています。医薬部外品の化粧品は、「薬用化粧品」と呼ばれることもあり、通常の「化粧品」に比べ、もう少し踏み込んだ表現が認められます。

例えば、「(シミやソバカスの原因となる)メラニン色素の生成を抑制」といった表現が可能です。また「しばり表現」と言って、一定の条件を付けることで認められる表現もあります。美白関連では「日焼けによるシミ、ソバカスを防ぐ」との言い回しですね。

この場合「日焼けによる」が、しばり表現に該当し、この語がないと誇張表現と見なされるでしょう。しかし薬用化粧品でも、「既に現れているシミやソバカスを治療して、白くする」「皮膚組織から肌を白くできる」といった誇大な表現は禁止されています。

合わせて読む:薬事法に基づいたスキンケア用品の効能効果の表現について

同じ「美白」であっても、メーキャップによって肌を白くする効果なら表現可能です。その代表が、ファンデーションでしょう。メイクの際、肌の上から上塗りすることで、シミやソバカスを隠すことができますね。

この白塗り効果は一時的なもので、メイクオフすれば肌も元の状態に戻るので、誤解を招く表現には当たらない訳です。このメーキャップ効果による表現に関しては、化粧品でも薬用化粧品でも同じです。

薬事法の表現規制は、過剰な表現で消費者に誤解を与えたり、混乱させないためのものです。一方で、実際にその商品を利用した消費者から「すごくよかった」などの体験談が、ネット上に書き込まれることがあります。その中には「肌が白くなった」「シミが消えた」といった口コミもあるかもしれません。

しかしそれがステマでもなく、ユーザーが嘘をつかずに書いた内容であっても、薬事法の規制に抵触した表現を用いた口コミを引用して、宣伝に使うのは違反となります。たとえ「個人の感想です」といった断り書きを入れても、規制に抵触することには変わりません。

宣伝する側としては、気を付けたいところです。

規制があると言っても、ネット上のサイトなどを見ていると、「薬事法に違反しているのでは?」と思われる表現も時々、見受けられます。ドラッグストアなどに行っても、ホワイトニング効果を打ち出したローションや美容液を見かけたりしますね。

消費者としては、「法律だ規制だ、と言っても、それほど厳格に守られていないのではないか?」といった印象さえ受けてしまいます。実際、規模の小さなメーカーや販売業者では、薬事法の広告規制の対策が十分でない所もあると言います。

特に悩ましいのが、違反かどうか分からない表現が散見されることです。こうしたグレーゾーンの表現の是非は素人が判断するのは難しく、法律の専門家の意見を聞くのが確実でしょう。

合わせて読む:薬事法では「改善」を使うと違反になるのか

判断が難しいからと言って、誤って規制違反の広告を出して後でトラブルになるのは、広告主としては是非とも避けたいところです。一番確実なのは、認められている56項目の表現をそのまま使うことです。先に化粧品の例を出しましたが、シャンプーであれば、「フケ、カユミを抑える」「毛髪の水分、油分を補い保つ」といったところが許容範囲です。

医薬部外品の歯磨き粉であれば、「歯を白くする」「虫歯を防ぐ」などが認められています。それだけでは商品の独自性をアピールできないのであれば、規制に抵触しない範囲で言い換えるしかないでしょう。例えば育毛剤の広告で「髪が生えてフサフサになる」と表現すると、規制に触れてしまいますが、「髪型を整えやすくする」であれば問題ないとされます。

美白化粧品ならば、「素顔のままで人前に出られる」などと表現できるでしょう。販売する側としては面倒かもしれませんが、自分の言葉で魅力的なキャッチフレーズを考えるのも、また面白いかもしれませんね。

薬事法上の広告表現とか、宣伝といった言葉を聞くと、製造者か販売者だけの問題と思うかもしれません。しかし薬事法では「何人も、医薬品等の名称・製造方法・効能・効果・性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽・誇大な記事の広告・記述・流布をしてはいけない」と定められています。

つまり個人でアフィリエイトを運営している人にも、この法律が適用される訳です。また、薬事法の規制対象の品目は、化粧品の他、シャンプーや歯磨粉、育毛剤、ヘアカラー、健康食品など多岐に亘っています。薬事法に違反しないためにも、これらの製品を扱うアフィリエイターは、法律の知識の取得や情報収集に努めるべきでしょう。